長年、不動産業界で禄を食んでいる身としてはタブーなんですが、日常の出来事への対処として参考になればと、ウラ話を少々。面白おかしい話ではなく、業者としてこんなことをやられたらイヤだな堪らないな、というお話です。
自分の家の目の前に、デベロッパーがマンションを建てる。「この住宅街に冗談じゃない、見下ろされる、日陰になる、断固反対、建設を阻止したい、少なくとも影響の小さい計画に変更させたい・・・」よく聞く話です。
結論から言いますが反対しようが、計画変更を求めようが、まずは住民に勝ち目はありません。
デベロッパーはマンション用地を最大限の容積率を使った計画を基に、その土地を購入します。その計画は建築基準法その他関係法規を遵守し、正当な権利の行使としてのものです。
近隣住民側の論理としては、「業者が自分たちの利益のために、近隣住民の環境を害して、法律を守っているとは言え目一杯の建物を建てるなど到底許しがたい、けしからん」というところですが、ここ日本は民主的な法治国家なんです。
適正な手続きを以って計画され、許可された事業を、法律を越えて差し止める権利など残念ながら無いのです。
かつて、日照権とか眺望権とかで裁判になった時代もあるにはありましたが、主たる法律である建築基準法の度重なる改正で、計画建物が周りに及ぼしていい日陰はこの範囲、隣地からはこのくらい離せ、等々が細かく決められ、そのうえで立てられた計画は、監督官庁としても認めざる(建築確認申請の受理)を得ません。
そもそも、土地の所有権は地下、地上まで及び、その空間もまた土地所有者のもので、近隣の住民はたまたまその空間を利用して(させてもらって)日照なり眺望なりを享受していたに過ぎない、という考え方が根底にあります。
だからデベロッパーは黙って建てられるか、と言うとそうでもないところに大人のと言うか、お役所のトラブル回避の世界があります。
『一定範囲の住民によく説明すること』というマジックです。”一定範囲” とは、だいたい計画建物の高さの2倍の長さを計画敷地からぐるりと囲んだ範囲ですが「説明すること」が義務なんです。当然、理解してもらうのが目的ですが、もろ手を挙げて賛成、理解などあろうはずもなく、説明した記録、出された意見、質問への回答の記録があれば、それでよしとなるのです。
デベロッパーにとって、計画を変更することは、特に階高を下げたりして床面積を減ずることは、事業収支上できないことなんです。この辺を理解しておかないと「建てます」「反対」「では仕方ないですね」と何の進展もないまま事業は進んでしまいます。
まれに「強行着工するのなら、座り込んで邪魔をしてやる」などと元気な方もいた時代もありましたが、そう法治国家日本では、逆に威力業務妨害として訴えられ、損害賠償請求もされかねません。
業界人としてデベロッパー 一人勝ちのような話で恐縮ですが、それでも現実的には少しだけ得られるものもあることも事実です。それは事業収支に関係しない、しずらいもの。例えば、ウチのほうに向いてる窓には目隠しをつけてくれ、
とか、工事でウチの塀が緩みそうだから、工事が終わったら建て直してくれ、
とか、意外と聞いてくれると思います。
デベロッパーの担当者も人の子、理解ある住民のためには何とかしてあげたいし、罵声を浴びせるような住民には絶対してやらない、ということも多いので、冷静に果実を得るべきでしょう。
但し、あまりお行儀のよくないデベロッパーがいるのもこの業界の事実特徴です。
住民のささやかな、常識的な要望にもケンモホロロの対応をされた場合、・・・これからが本論です。
先ほどから言っているように近隣住民の反対は、事業推進上特に問題としないのがデベロッパーですがもしもこんなことをやられたら、”堪らないこと” をお伝えします。幸いやられた経験はありませんが。
それは自ら周辺環境を悪化させて、マンションの販売に悪影響を与えることです。
具体的には庭先で豚を飼いましょう、鶏をたくさん育てましょう。
と言っても、本当に豚や鶏を飼うのは大変です。その計画があることを庭先に掲示し、デベロッパーにも伝えるだけでいいんです。こういった情報は、マンションを売る際に(賃貸も)、「重要事項説明書」に明記し、資格者が説明することになっているのはご承知かと思います。販売部隊からすれば大変な痛手です。
このカードを切ることによって、デベロッパーから「お話をさせてください」と、テーブルについてくること(私なら)確実です。
因みに、豚を飼うのは1頭から許可が入りますが(計画であればそれも気にすることはなく)、鶏なら99羽までならふつうに飼えます。
ただ単に悪意を以っての実行はやめましょう。あくまでも非礼な業者への対抗手段として。