タ・プロームが伝える世界観、人は生まれ、ある日、姿を消す

穏やかな大晦日。

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年末に駆け足でアンコール・ワット遺跡群を回り、観光地としてそれなりに感動して帰国したのだが、タ・プロームからもらった世界観は鮮烈だった。

そして今年亡くなった、長田弘氏の「アメイジング・ツリー」がタイムリーに、いや奇遇にも、12/30の読売新聞「編集手帳」で紹介されていたことも重ねて、2015年の最終日に物思う。

アンコール・ワットそのものは、偉大なる遺跡を文化や歴史を失わないよう、そして観光地として栄えるよう一生懸命に修復を重ねながら、涙ぐましい程の努力で存在させていて、著名な世界遺産としての面目躍如である。
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建物も、

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広場も回廊も仏像もレリーフも、あまたの紹介通りそりゃ見事である。

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凛々しいカンボジアン・キャット?の出迎えもあったり、(本当に神々しい)

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浮浪児のような人気者の子供も、観光地にはお似合いである。

ただこの奥にあるアンコール・トム、そしてバイヨン寺院がちょっと残念。
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パンフレット通りの有名な大きなお顔も壮大だったけど、

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修復に手が回らないというか、見捨てられた廃墟感が拭い去れない。

アンコール・ワットとともに支配者が立ち去ったあと、それらを特に必要としていなかった一般の市民は、それらを守ることも同時に必要とせず放置されたこともあるようだけど、何よりここには緑や命がない。
人が勝手に作って勝手に滅びた、自業自得の文明のなれの果てとしか感じられなかった。

それに引き替えである。
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タ・プロームはカンボジアの密林ジャングルの中にあり、緑と共存、共生している感がありありなのである。(宮崎アニメの「天空の城ラピュタ」のモデルのひとつとも言われている)

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人が作った束の間の構築物が朽廃しているのは同じでも、もっと大きい自然の生命に包まれて時を刻んでいる。

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巨木が支配?擁護?

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出入口をふさぐ?守る?巨木。

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有名な撮影スポット。

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実際、樹木に侵蝕されているのか支えられているのか分からないほどともに生きているよう。

こういった見方は、おそらく自然というものを敵とせず、折り合いをつけて生きてきた歴史のある東洋人のものかと勝手に思っているが、朽廃した建造物とそれと生きる木々(ガジュマル)のこの空間は妙に落ち着きを与えてくれる。遺跡を取り巻くジャングルの木々と南国の鳥や虫の鳴き声は、タ・プロームに生命を吹き込んでいる。ここは廃墟ではない。未来に向かってさえいる。

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既述の「アメイジング・ツリー」。

『この世で人はほんの短い時間を土の上で過ごすだけに過ぎない仕事して、愛して、眠って、ひょいとある日姿を消すのだ。人はおおきな樹のなかに』

おおきな樹もまた自然の摂理の中、”一瞬を” 生きるということを教えてくれたタ・プローム。
会えてよかった。日本人なら共感してもらえると思う。(先日の日韓合意への評価はそれぞれでも)