思い出すままに・・・。
『科学技術の進んだN星の資源収集チームが隠密裏に地球に降り立ち、N星に持ち帰る価値あるものを探していた。「この星にも大したものはないな、帰還するか」と話していた時、フと覗いた家の中で売れない手品師がシルクハット手品の練習をしていた。
「ウーむ、なかなかうまくいかんな」などとつぶやきながらも、シルクハットの中からハンカチを取り出し、花束を取り出し、ハトを取り出し「こんなものかな」とやっている。
唖然として窓越しに眺めていたN星のチーム員は、狂喜して手品師の家になだれ込み、手品師を縛り上げ、そのシルクハットを奪ってしまった。「こんな何でも出てくる機械は見たことがない。悪い N星へのみやげとさせてもらおう」相方が言う。「まったくだ。だがタダでもらっていくのも気が引ける。何か代わりに置いていけるものはないか」「こんなものしかないが」
「それはこの星に来る前の惑星にゴロゴロころがっていたものではないか。が、しかたない、これで勘弁してもらおう」
N星のチーム員は手品師を残し、森に隠してあった宇宙船に乗り込み、超高速で去っていった。
残された手品師の足元には、こぶし大のダイヤモンドがいくつも転がっていた。