北茨城名所・旧跡の旅、五浦:六角堂から勿来の関編

日本三大名瀑『袋田の滝』から山越えで、太平洋を目指してワインディングロードを東へ。大津港に抜ける県道27号線は行きかう車もわずかで、緑のトンネルの中を快適に走らせてくれる。

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新緑の名勝『花園渓谷』を抜けてひたすら東へ。
今宵の宿は北茨城の老舗旅館「五浦観光ホテル別館大観荘
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正面玄関

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客室からの眺望

ここも二十数年ぶりだが、東日本大震災の津波でいくつもの温泉施設が流され、あらたに設えて営業している。人手不足なんだろう、食事が部屋だしから大広間に変わってはいたが、らしい温泉宿。

翌朝、チェックアウトして車で1分の『六角堂』へ。これも東日本大震災の津波できれいに流され、有志の力により再建なったばかりのもの。
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明治38年に岡倉天心の設計により作られた仏堂と茶室の融合体で、法隆寺の夢殿を模したとも言われ、床面積わずか9㎡なれど日本美術の聖地である。震災の一年後には再建された原設計に忠実な六角堂。以前にはなかった炉も切ってある。

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岡倉天心が住まいとしていた居宅の 庭 も日本情緒たっぷり。

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この岡倉天心日本画家の巨匠横山大観、菱田春草との親交は知ってはいたが、この記念館でよくよく見ると、日本画の歴史に残る大きな人物であることをここで知った。
岡倉天心自身も画の才能はあったようだが、それ以上に横山大観や菱田春草に親しまれ、彼らをして日本画を世界に知らしめたプロデユーサーとしての手腕、それでいて官の支配を嫌い、豪放磊落に且つ、余生は西洋式のボートを作って釣り三昧などという魅力ある御仁である。

この近くに映画「岡倉天心」を撮ったときのオープンセットが公開されており、ちょっと覗いてボランティアのおじさんから聞いた話だが、何でも横山大観はお酒、特に広島の名酒”酔心”が好きで、奥さんに頻繁に買いに行かせていたところ、酒屋の主人が横山大観の奥方であることに気づき、求めるまま進呈していたが、ふところの淋しい時代の大観はそのお礼ににと毎度描いた絵を渡していたという。後年、酒屋の主人はその価値ある絵の束を売らずに記念館をつくって保管、公開しているとのこと。

さらに車で3分。天心記念五浦美術館に立ち寄り、その建築物と外構の立派さに打たれ、建築費や維持費はいかほどか、と無用な心配をしながら五浦を後にした。
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立派に尽きる。入館料190円はたいへん良心的。

少し北上して福島県に足を踏み入れ、県境にある奥州三関のひとつ勿来の関を訪問。
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勿来は、来る勿(ナカ)れ とのことで、奈良時代から蝦夷の南下を防ぐ目的だったらしい。

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関の内側もこれはと思うくらい整備されているが、この勿来の関を取り囲むように全体が公園として整えられている。デカイ。

旅の終わりに大津港へ。ここもまた東日本大震災で津波をかぶり、港湾施設が壊滅したあと漁業協同組合直営の食堂や記念館を再建し、頑張っている。
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大津漁協直営市場食堂の海鮮丼。1350円。これ以外も廉価、美味まちがいなし。人気のお店であるが午後三時には閉店する。

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お祭りの町ということらしく、こんなデカイ船を路上で引き回す。この記念館「よーそれ」とかも震災の津波でぐちゃぐちゃになった後やっときれいに。入館料300円。この日はなんかの理由?で100円で、しかも、中に入って人を呼ぶまで無人のまま。おおらかである。

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大津港の番人、オツコに見送られ帰路につく。