染井吉野は散ってしまったけれど、晩春の飛鳥山は満開の八重桜と新緑を楽しむ人で賑わっていた。
山の頂上の児童公園には、近くを走る”都電:荒川線”の旧車両が展示され、八重桜と新緑ときれいにコラボレーション。
晩春というより初夏の緑道。江戸の時代から庶民の花見の名所として知られる飛鳥山だが、昭和の時代にはこの緑道の先に回転式の展望台があり、それなりの観光地の風情もあったっけ。
その跡地と思われるところには、花が一面に植えられ(パンジーとヒメジオン?かな)その先の頂のはずれからは、何とケーブルカーのようなものが下のJR「王子」駅に繋がっている。
総延長50M、高低差20Mを2分で往復する無人の乗り物。パークレイルという設備で車体には「アスカルゴ」という楽しい表記。尚、無料である。飛鳥山を後に北に歩を進めていくと、10分ほどで有名な”王子の狐”稲荷神社に至り、お参り。
道路から参道を望む。左奥は幼稚園。
ここで無病息災とアシアナ機の事故解明を願い例のごとくお賽銭を入れるのだが、「ポケットにある最小の小銭を入れる」ことを信条としている私のポケットには、不覚にも500円コインが二枚。信条を曲げてバチがあたるのも怖くなって、泣く泣く500円を献上・・・。
社殿の右手から更に岩山の階段を上っていくと、狐がお住まいになっていたという祠にたどり着く。
あぶらげを置いておくと、いつの間にかなくなっているらしい。
王子の稲荷を後にさらに北に数分、地元ではちょっと有名な(地元以外は全く無名な)”名主の滝公園”の裏口が門を開けている。ずーっと昔は有料だったはずだが、無料に誘われ何十年か振りに園内へ。
裏門の外で、まずは黒猫がお出迎え。
ひっそりした園内は世間の雑踏、ましてや中〇人の大声も無縁でわび、さび、さえ染入ってくるよう。雄滝、女滝、独鈷滝の看板を見て石畳の道(歩きにくい)を上り下り、雄大であろう雄滝を目指す。
雄滝。この日は調子が悪かったのか雄大さは影を潜め、しずくがちょろちょろだったが、堪能、堪能。
※調子いい時のお姿
裏門から入ったので逆コースで正門から出ると、そこには忘れもしない上り坂、三平坂というのだった。
幼いころ、ここに買ってもらったばかりの自転車をつないで、この上にある区民プールに行った際、盗まれた。数十年前のことなれど。
ここからJRの線路沿いに「東十条」駅方面に行くと、線路際にいわゆる撮り鉄さん達が数十名、高価そうなカメラを構えて下り列車を待ち構えている。
何を待っているのか聞くのも憚られたので、一緒になってボケッと待っていると、お目当ての列車が通過。
上野から札幌に向かうかの寝台特急「北斗星」様であった。
定期運航は終了し今は臨時列車。プラチナチケットのこの列車も8月半ばがラストランとのこと。何でも「東十条」駅周辺は、京浜東北線、宇都宮線、高崎線、が同時に見られる撮り鉄さん達のスポットとなっており、その道の人たちから”ヒガジュウ”と呼ばれ愛されているらしい。
晩春、初夏の「王子」-「東十条」たった一駅間の散策でした。